4月24日より、我々アーティストの支援をしてくださるNPO法人結によって「美術の時間」という取組みがスタートしました。
この取組みは、常陸太田に暮らす方々とともに「美術=美しい暮らしの術」に触れたり感じたり考える時間を作っていきたい、という気持ちから生まれたものです。
その第一弾企画として、林友深による「美術の時間 Vol.1 たわむれ at アート」と題したワークショップを開催しました。
「たわむれ at アート」では、私が普段作品制作で使用している「グラスデコ」という絵の具を用い、
「感覚のままに描く」ことに挑戦してもらいました。
このワークショップは、「描く」ということを捉え直す、「美術」というものを捉え直すきっかけとして考えたワークショップです。
美術の授業でも、絵を描くときはたいてい目の前にある対象物を描きます。
でも、それだけが「美術」じゃないのです。皆さんが学んできた「美術」より、もっともっと「美術」も「描く」ことも幅広いのです。
普段とは違う素材で、普段とは違う視点で、普段とは違う感覚で「描く」ことと向き合います。
しかし、いきなり「感覚で描いてください」と言っても、どうしていいかわからないでしょう。
そのため、今回のワークショップでは簡単なルールを作り、最初に描く上でのヒントを伝えました。
【ルール】
・直線を使わないこと
・心を込めること
【ヒント】
・絵と会話をするつもりで
・思い通りにいかないのが当たり前!
直線を使わないのは、なるべく自然に有機的に手を動かしてもらいたかったので禁止にしました。
そうすると、いやがおうにも線はするする流れるように動きます。自由に解放された感性を正方形の中に閉じ込めることはできません。
普段は四角い紙の中に絵を配置しなければならないですが、今回は違います。グラスデコは塗りつぶした部分だけが貼って剥がせるようになる絵具です。
自分の描いた線が、そのままその絵のフレームになるのです。
だから、四角を飛び出して四方に弾き飛ばしてよいのです。
心を込めるというのもまたわかりにくいですが。つまりこうゆうことです。
たとえ素晴らしい言葉でも、紙に書いてあるのを棒読みで読み上げるのでは、人の心に届かないですよね。
心と内容が噛み合ないという感じで、聞いてるほうは「ぽかーん」ですね。
ですが、自分の意思を持ち、心を込めれば、同じ言葉でも説得力を持ちます。
絵だって同じです。感覚のままに描くため、考えずに手を動かす。だからといって、棒読みで描いたら空っぽです。
心を込めて描かないと、紡ぎ出される絵にちゃんと話しかけないと、画面から返事はかえってこないのです。
【グラスデコについて】
そもそもグラスデコとは?これは株式会社ヤマトさんがつくっている製品の名前です。
この素材を用いた作品制作を、私は4年ほど前から行っています。
グラスデコは、チューブから直接、専用のシートに絵を描きます。
それが乾燥すると、半透明のシールが出来上がります。
それをガラスに貼付けると、ステンドグラス風に仕上がります。
↓参考写真
さ・・・・制作開始です!!どうなるかしら!と思いきや・・・・
思った以上に大胆に腕を振り回しています。
最初から立ち上がって、真正面から画面に向き合っていました。
驚きました。
あっという間に、1時間40分ほど、熱中して絵の具をしぼりだし、埋め尽くされていきました。
こんな大きな画面に、普通の絵の具よりも塗りつぶすのに時間がかかる素材なのに。
それぞれが色んなリズムで、絵の変化や気持ちの変化を楽しんでいるのを感じました。
グラスデコという素材は鉛筆や水彩絵の具などとはまったく異なります。
絵の具のチューブから直接画面に描けること、そのぷるぷるしたカラフルな質感など、絵を描くという現象自体を楽しめる面白い素材です。
だからこそ、皆さん素直に純粋に描く行為を楽しめたのかもしれません。
全員アーティストだ!!!!!!!!
と痛感しました。
出来上がった瞬間の作品と、乾燥して透明になり、ガラス面に貼付けられた写真を比べて次回アップいたします!
カフェのガラス面に貼付けるのは5月の予定です。あまりに皆さんの作品が大きかったため、スキマを埋める用の透明絵具が足りませんでした★
圧倒されました。
参加してくださった皆様・・。ありがとうございました!!
こんな激しくて美しい気持ちが詰まっているなんて。
こんな自分がいたの!という発見があったんじゃないでしょうか。
自分で自分を越えちゃうっていう感覚は、面白いですよね。
考えないようにする、といっても、少なからず考えちゃうものです。
いつのまにか自分の好きな色、好きな配色、好きな形を知らず知らずのうちに描いているんです。
心が考えて描いてるんですね。
頭を使って考え込んで描くよりも、クリアで気持ち良い感覚なんじゃないかと思います。
思い通りにいかなくても、絵心なんかなくても、気持ちの通り道を広げることで、表現はどんどん解放されてゆくんです。
私にとっても沢山の発見と感動がありました。
めちゃくちゃ嬉しいです。
言葉にできないこと、言葉にしてもありきたりになってしまうこと、未だそればかりです。
一つずつコツコツ積み重ねて、この一瞬一瞬をしっかり繋いで、感じて、変化して、人生という摩訶不思議な道のりを歩んでいきたい。
これからも、少しずつ、少しずつ、色んな形の「美術の時間」を育んでいきましょう!!